特別ゼミ テンダーさんをゲストに迎えて
この日は、水先案内人のテンダーさんに来ていただきました。
テンダーさんは、米国で先住民族の文化・ 技術を学び、現在は鹿児島で「電気・水道・ガスの契約ナシ、年間家賃1万円」というユニークな家「てー庵」で生活しています。
ゼミは始まる前のおしゃべりで、風の谷のナウシカの話になります。
ナウシカには思い入れのあるテンダーさん。ゼミ生のちあが、ここ最近一気にジブリ映画を見たことで「ラピュタ」と「ナウシカ」を混同してしまっていることにショックを隠しきれないご様子(笑)
ナウシカをとてもリスペクトしているそう。
そんなテンダーさんの本日の話のタイトルはずばり「野糞」!
「は?GTCで何でそんな話?」と思うと思います。しかしこのゼミ、すごく豊かに学べる時間になったのです。だまされたと思って最後までお読みください。
一体どんな内容になるのかみんな期待に胸を膨らませながら?ゼミはスタートします。
軽快かつ個性的な語り口で、GTC生の関心を集め、惹き込んでいくテンダーさん。
「自分たちの”下水”のシステムがどうなっているのか知っているかい?」
冒頭、そう問いかけられます。
「下水管に運ばれる・・?」
テンダー「そのあとどうするの?」
「下水処理場で処理される」
テンダー「下水処理場ってなに?」
「汚い水をきれいにするところ?」
テンダー「そのあとどうなるの?」
という具合で、自分たちの排泄物がどのように処理されるのかを辿っていきます。
「下水処理場で薬?に付けられて水がきれいになるんだっけ?」
テンダー「おお、きれいになった水はどうなるの?」
「川に戻る」
テンダー「最終的にうんちは川に戻って、川に戻るとどうなる?」
「汚れる」
テンダー「なんで汚れるの?」
「消毒したものが川に入って、川に混ざってしまう…?」
「あれ、うんこって環境に悪いのかな…?」
下水処理場で消毒するときにリンや窒素が含まれるのですが、それは最終的に海に流れます。窒素汚染された海は魚が住めなくなるなどの弊害があります。窒素が入ってくると藻が増え、その藻が大量の酸素を使うために海が磯焼けや赤焼けと呼ばれる状態になり魚がいなくなるという状態になります。
話はテクノロジーの話にうつります。
ハイテクは、自分たちの設定した目標値しかカバーができません。しかし、先住民持続がこれまで1万年もつないできた伝統的な文化や風習は、それが受け継がれる理由があるほど地球にとって合理性があるとテンダーさんは話します。
「だってトイレがない土地で人びとが野糞をしたって、地球は野糞まみれになっているかい?」
「おれの経験上、野糞におがくずをかけてそのまま放置しておいたら、3時間あとにはほぼなかった!ってこともある。自然界の微生物からしたら超栄養分が含まれてるごちそうなんだぜ!」
だんだん野糞の話が、地球の話、これからの自分たちの生活の話と壮大になっていきます。
ここでテンダーがどうしてもみんなに理解してほしいというエッセンスが伝えられます。
それは「改善と解決の違い」。
改善のモデルは、ものごとが−300の状態から−3に変えること、といいます。例えば、環境に良い石鹸を使って食器を洗うことなどがそれにあたります。環境活動のモデルのほとんどのものは、この改善モデルの話をしています。
それに変わって「解決」はそもそもマイナスを生まないこと。例えば、小皿に残ったお醤油は分解するのにその何百倍もの水をを必要としますが、食器を洗う前にお醤油を土の上にこぼしてしまえば、それは分解され、まったく川や海を汚しません。
野糞を土に返すことは、地球の生物にとってもご馳走になるし、それによって海の生物が死に絶えたり、地球にリンや窒素が蔓延することもなくなるという意味で根本的な解決になるという話です。
「へー、野糞・・・すげー」
最後に、若者が自分たちでできることを増やし、自分たちで解決モデルを回せるようにとの願いも込められ、テンダーさんからロープワークを伝授します。
これからの時代を生き抜くために必要なことは、「専門家に頼るのではなく、自分でやること」と語るテンダーさん。
みんなの心に衝撃的なインパクトを与えた1時間半となったのではないでしょうか。
ちょうど、この直前にここまでの学びの振り返りでESD(羽後さんがゲストで来てくれたゼミ)の内容を思い出していたので、まさにそれとピッタリつながる、ベストタイミングなレクチャーでした。学んだことがどんどんつながっていく感じにGTC生も興奮している様子でした。
テンダーさん、ありがとうございました!